新型コロナウイルス感染症のワクチンは、国内外で開発が進められています。現時点では国内で薬事承認された新型コロナウイルス感染症のワクチンは存在せず、ワクチンの開発には一般に年単位の時間がかかりますが、厚生労働省では、できるだけ早期にワクチンを実用化し皆様にお届けできるよう取り組んでいます。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まって、10ヵ月以上が経過したが、終息のめどは立っていない。世界では、死亡者数で、アメリカが22万人、ブラジルが15万人、インドが11万人に達している。感染者数では、アメリカが840万人、インドが786万人、ブラジルが535万人を超えている。そのほかにも、ロシアや南米諸国など多くの国で感染拡大が進んでいる。特に、北半球が冬にさしかかるなか、アメリカやヨーロッパ各国では、感染拡大の勢いが再拡大している。ヨーロッパでは、再び外出制限などの措置がとられ始めている。
世界全体で感染者数は4251万2186人、死亡者数は114万7301人。日本の感染者数は9万6534人、死亡者数は1711人(横浜港に停留したクルーズ船を含まない)に達している。(10月25日現在/世界保健機関(WHO)の“WHO COVID-19 Dashboard”より)
感染拡大や重症化を防止するためには、ワクチンの投与がカギとなる。春先から世界中の医薬品メーカーでワクチンの開発が進み、多くのワクチン候補が臨床試験の段階に入っている。いずれ、有効性と安全性が確認されたワクチンが承認されて、予防策として用いられるものとみられる。
日本では、全国民分に相当する2億4000万回分超の供給を受けられるよう、政府が医薬品メーカーと合意しており、流通や接種体制などの整備が進められている。ただ、実際に供給が始まっても、いきなり全員分が用意できるとは限らない。そこで、どういう順番でワクチン接種を行うかという「優先順位」の問題が出てくる。
新型コロナウイルス感染症対策分科会は、この問題について議論を進めてきた。
優先順位の上位に位置付けられている人たち
(1)新型コロナ患者やその疑いのある患者に直接医療を提供する医療従事者等(患者の搬送に携わる救急隊員、積極的な疫学調査等に携わる保健師等を含む)と、高齢者および基礎疾患を有する人を接種順位の上位に位置づけ。 ※具体的な範囲等については、今後検討
(2)高齢者施設や障がい者施設等で従事する人の接種順位について、業務やワクチンの特性等を踏まえて検討。
(3)さらに、妊婦の接種順位について、国内外の科学的知見等を踏まえて検討。
(1)で、患者に対応する医師などの医療従事者が上位に位置づけられているのは当然といえるだろう。また、感染、発症した場合、重症化の恐れが大きいと考えられる高齢者や基礎疾患を有する人も上位に位置づけられており、重症者が多数出た場合の医療資源の逼迫を防ごうとする意図がみられる。
(2)で、高齢者施設等で従事する人の順位について、業務やワクチンの特性等を踏まえて検討する点も理解できるだろう。施設で従事する人から高齢者等への感染を、防ぐ狙いがあるからだ。
(3)の妊婦については、胎児への影響もあるため科学的知見等を踏まえて検討していくことが求められよう。
なお、基礎疾患がなく医療従事者等でもない、高齢者以外の成人・若年者については、この報告書では特に触れられていない。