新型コロナウイルス感染症のワクチンは、国内外で開発が進められています。現時点では国内で薬事承認された新型コロナウイルス感染症のワクチンは存在せず、ワクチンの開発には一般に年単位の時間がかかりますが、厚生労働省では、できるだけ早期にワクチンを実用化し皆様にお届けできるよう取り組んでいます。
モデルナ社とファイザー社の新型コロナワクチンに世界が注目した理由は、有効性のほかにもう一つある。その驚異的な開発スピードだ。
通常、ワクチンの開発には数年を要し、候補にまでこぎつけても「10分の1」しか認可が下りないとされる。
新型コロナウイルスは、中国・武漢で昨年12月上旬に発生し、流行が世界に広がったのは今年に入ってから。両社ともわずか10カ月ほどで第III相試験の結果公表にまで至り、ファイザー社は米食品医薬品局(FDA)に対する緊急使用許可申請の準備を進めているという。
このスピード感は、製薬会社を擁する富裕な国々自身が、新型コロナウイルスの脅威にさらされた結果にほかならない。
皮肉なことに、米国だけで1000万人超、欧州で1400万人超という、製薬企業お膝元での大流行が、第III相試験を実現させた。第III相試験は大がかりだ。万単位の人々に本物のワクチンと偽薬を無作為に接種し、数カ月間追跡して発症率の差を検証しなければならない。
中国では感染を抑え込むことに成功した半面、大規模試験によるワクチンの効果の評価ができない。中国のワクチンメーカーは、ブラジルやUAEなどで臨床試験を実施している。
そもそも開発途上国のみで流行していたら、こうは行かないはずだ。
例えば、エボラウイルス感染症はアフリカ奥地で1970年代には見つかっていたが、ワクチンや治療薬の実現には40年かかっている。本格的にワクチンの開発が進んだのは、2014年頃のこと。アフリカ人口最大の都市であるナイジェリア・ボゴタが流行地となり、米国にも飛び火する恐れが出てきたためだ。
こうした感染症は「Neglected tropical diseases」(顧みられない熱帯病)と呼ばれている。欧米社会にとって脅威でない病気は、ワクチンや薬の開発が進まない。大口の買い手が付かないからだ。毒蛇に対する治療は、いまだに血清に頼っている。